auの思い

私たちの挑戦が未来を豊かにする。KDDI研究所長が語る「創造への挑戦」(後編)

2016.06.17

前編では、KDDI研究所の歴史や社風、これまでの実積を中心に、「au×HAKUTO MOON CHALLENGE」ではどのような役割を担っていくのかをKDDI研究所長の中島康之氏に伺った。後編では、月面での通信を成功させるため、実際にどのような実験や研究が行われているのかに迫る。また、このプロジェクトがKDDI研究所に与えるシナジーについても語ってもらった。

HAKUTOをサポートする話を聞いた瞬間、頭の中でプロジェクトが動き出した

中島所長は、KDDI本社で「au×HAKUTO MOON CHALLENGE」の話を告げられたときの気持ちを「なぜKDDIがやるのか戸惑ったし、民間団体が月を目指すことにとにかく驚いた」と語った。しかし、最終的にKDDI研究所は技術提供を全力で行う方針に至る。

実は、中島所長は映像データの圧縮とデータの復元という、月面でのミッションの一つである「映像や画像を地球に伝送する」ことを成功させるためのコア技術に関わる研究に従事していた経歴を持ち、圧縮映像処理技術の工学博士でもある。

「正直、話を聞いた瞬間から、自分が研究していたあの技術やこの技術が使えるのではないかと、頭の中で勝手にプロジェクトが動き始めていました」と笑う。中島所長の頭に思い浮かんだ技術とは、動画の圧縮技術だ。

KDDI研究所 中島所長

「最近ではほとんどのビデオカメラやテレビ放送に使われているMPEGという映像データの圧縮技術の策定に携わっていたんです。いまはMPEG-4(H.264)が使われていますが、私が参加したのはMPEG-2から。動画データの圧縮率を高めると容量は軽くなりネットワークで配信しやすくなりますが、画質は劣化します。そのバランスをどう取るかを研究して、標準規格を作り上げました」

もう一つの研究テーマが復元技術だ。圧縮技術と共に、復元技術は月面でのミッションには欠かせない技術である。

「通信状況が不安定なとき、圧縮データが欠落してしまう『パケットロス』といった現象が発生します。ネット動画などで、画像や音声が乱れることがありますよね。あのような状況をどうリカバリーするかなどを研究していました」

若い研究者に昔の文献を引っ張り出してきてアドバイス

月面での通信は、電波環境によってデータの処理能力が急激に変化する可能性がある。さらに、ランダーから離れるほど電波は減衰し、送れるデータ量にも限りが出てくる。

そんな状況で高解像度の動画データを送信するには、短時間で効率的にデータを送信する圧縮技術に加えて、データが欠落した場合、修正し再現性を確保する復元技術も必要となるのだ。

中島所長は「画像がしっかりと届かないような厳しいネットワーク環境の時代に実験してきたので、月面で通信が遮断されたときにもデータの復元ができるのではないかと想像できました。私も当時の文献を引っ張りだして所員たちにアドバイスをしているんです」と笑う。

今回のプロジェクトでは、新たな映像圧縮技術を開発することなく、一般的に普及している「H.264」が採用されている。YouTubeやニコニコ動画など一般的動画配信サイトでも使用されている動画圧縮規格だ。そこに、月面撮影に特化した解像度、フレームレート、画質の最適解をさまざまな角度からシミュレーションを重ね、決定していくという。

データ復元技術においては、月面撮影での典型的なカメラノイズ、撮影の構図、色成分、走行中のブレを考慮しておくことで、時間および空間方向での画像復元を行うことができ、圧縮データが欠落した場合でもオリジナルの画像を再現できるようになるそうだ。

中島所長が語る、HAKUTOプロジェクトが持つ
「世代を超えたロマン」とは?
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