イベントレポート

鳥取砂丘が月面に!? 鳥取県とHAKUTO、連携協力。

2016.06.29

月面走行をシミュレーションするため、鳥取砂丘で走行試験

5月18日、鳥取県の知事公邸で、日本発の月面探査チームHAKUTOと鳥取県との連携協力の協定締結式が行われた。今後鳥取県はHAKUTOが行うローバー(月面探査ロボット)のフィールド走行試験を、そしてHAKUTOは鳥取県の人材育成を応援し、相互に協力していくことになる。HAKUTOは2016年9月以降、ローバーを鳥取砂丘の砂地で走行させ、技術検証と操縦検証を行うフィールド走行試験を実施する予定だ。

月面を走行するHAKUTOのローバー(イメージ図)

月面という特殊な環境でローバーを走行させるためには、振動、放射線、熱真空試験と並んで、不整地でのフィールド走行試験が重要となる。重要なのは、さまざまなシチュエーションを想定し、どれだけ長期間じっくりテストができるか? ということ。何度も繰り返しテストをすることで、ローバーの完成度を高めていくことが、ミッションの成功率を上げることにつながるのだ。

60℃まで上昇する砂丘表面の温度、月面並みのハードな環境

鳥取砂丘は日本でも有数の広さを誇る砂丘で、粒子の細かい砂が特徴だ。また高いところで標高40、50メートルに達するなど、地形がきわめて起伏に富んでいるところも、パウダー状の細かい砂に覆われた月面の地形に類似している。さらに砂丘の表面温度が一番熱くなる13時頃には、場所によって最高60℃まで上昇し、月面に近い熱環境を再現できるため、まさにローバーのフィールド試験には、うってつけのロケーションといえる。

撮影:若松紀樹

砂丘のもう一つのメリットは、人工物や植物が少ない環境で試験できるという点だ。月面には、わかりやすい目印となる存在がない。地形や岩などをローバーのカメラ映像で確認しながら、距離や方向の指示を地球から送って操作するのである。映像だけで、38万キロ離れたローバーを操作することは、想像以上に難しい。

袴田:広大な砂地で長時間の使用許可を得ることができる土地は、日本にほぼ存在しない。多くが国や県の指定区域になっていて、借りられても短時間になることがほとんど。鳥取県が協力で、どんどん実験ができるのは、ローバーの完成度を高めるために非常にプラスに働く。

平井(伸治 / 鳥取県知事):もう月にも飛ぶような想いだ。これから宇宙の時代がやってくるが、それに鳥取という土地が関われることは何より嬉しい。われわれ鳥取県として持てる力で協力していきたい。

と締結式で話した平井知事は、HAKUTOが鳥取砂丘で行うフィールド走行試験を全力で応援していくことを宣言している。

左から、HAKUTO代表の袴田武史氏、鳥取県知事の平井伸治氏

「多くの人がチャレンジすれば、そのチカラが日本を良い方向に向かわせ、世界もポジティブになると信じている」(袴田)

HAKUTOは鳥取砂丘でフィールド試験を行うだけでなく、鳥取県における産業人材の育成に協力する。今回の締結式後には、袴田氏が鳥取県の青翔開智中学校・高等学校を訪れ、約170名の生徒に向けて講演を行った。

袴田:HAKUTOのミッションは、多くの人にチャレンジするきっかけを提供すること。ぼくたちがいままで誰も成し遂げたことがない大きな夢にチャレンジすることで、「いつでも、どこでも、誰にでも、どんなことにでも、チャレンジできる」と証明をする。多くの人がチャレンジを始めれば、そのチカラが日本を確実に良い方向に向かわせ、世界もポジティブになっていくと信じている。

講演後、生徒からも、「自分たちも夢に向かって挑戦を続けたい」「夢みたいなことがだんだんと現実になっていく活動にとてもワクワクした」という感想があった。HAKUTOの想いを聞いた10代の生徒たちが、大きなチャレンジへのきっかけを得ていたとしたら本望だ。

夢を、夢だけで終わらせないために、一歩一歩、月を目指す

HAKUTOと鳥取県の協定締結式が行われた5月18日は、ちょうど47年前(1969年)に「アポロ10号」が打ち上げられた日だ。アポロ10号は、人類初の月面着陸を成し遂げたアポロ11号の出発直前に打ち上げられ、月には着陸しないものの、着陸に必要なすべての機器や手順の検証を行った。いわば、アポロ11号が月面着陸するためのリハーサルだったというわけだ。

鳥取砂丘でのフィールド走行試験もまた、HAKUTOのローバーが月面走行するための、壮大なリハーサルである。歴史上初めて人類を月面に到達させたアポロ11号のように、HAKUTOも歴史上初めて民間による月面探査を目指す。

袴田:このプロジェクトは、多くの人に夢を与えられると思います。また、夢を夢だけで終わらせずに、確実に一歩ずつ歩んでいくことで、ちゃんと夢は実現できるということを証明したい。

HAKUTOは、一歩、また一歩と、着実に月に近づいていく。

PROFILE

秋元 衆平 / SHUHEI AKIMOTO

HAKUTOを運営するベンチャー企業「ispace」Communications Manager。2010年からボランティアとしてHAKUTOに参加。PR会社、事業会社広報を経てispaceに加入し、現在HAKUTOのプロモーションを担当。

撮影
櫻田亨

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