ライバルチームの素顔

【vol.4】開発場所はなんと自宅オフィス。家族と友人だけで月を目指すチーム「Plan B」

2016.07.13

世界10か国以上から16の民間チームが参戦する人類初の月面探査レース、「Google Lunar XPRIZE」。HAKUTOだけでなく世界中の対戦チームたちも、月への熱い思いを持ち、ヴィジョンを本気で実現するためのエネルギーに満ち溢れている。

1969年にニール・アームストロングが月の大地を踏みしめてから47年。いま、人々はなぜ再び月を目指すのか。大学で機械工学を専攻する傍らHAKUTOで活動を行う村井太一が、HAKUTOのライバルであり、共に月の開拓を目指す同志でもあるGoogle Lunar XPRIZE参加チームのメンバーへインタビューを実施。月面探査で世界を変えようとしている人々の素顔に迫った。

第4回目のインタビューは、カナダから唯一の参加チーム「Plan B」のソフトウェアエンジニア、セルゲイ・ドブリアンスキ氏に話を聞いた。

全世界から個性あふれる16チームが参加するGoogle Lunar XPRIZE。その中でも異色のチームが「Plan B」である。なんと、チームメンバーは「家族とその友人だけ」で構成されており、リーダーであり父のアレックス・ドブリアンスキ氏と、息子のセルゲイ氏が中心となって開発を進めている。他チームに比べて予算が少ないため、開発は自宅オフィスで行い、微小重力実験などでは、市販のドローンを使うこともあるそうだ。

ウクライナからカナダへ移住した経験があるドブリアンスキ一家。「月に触れたい」という純粋な思いを抱き続けてきたアレックス氏は、ウクライナにいたころ、ロシア宇宙庁でオペレーティングシステム(OS)の開発を行っていたそうだ。「自分は完全な数学者でも物理学者でも技術者でもない」と語るアレックス氏だが、自らPlan BのローバーやランダーのOSを開発し、ローバーの設計も行っている。

Plan Bロゴ

まるで「宇宙家族」と形容したくなるような「Plan B」。そのモチベーションにあるものは何なのだろうか?

最初は誰もがクレイジーだと思った? 家族チームがGoogle Lunar XPRIZEを通して実現したいこと

− なぜ、家族と友人だけのチームで月を目指そうと思ったのでしょうか?

セルゲイ氏:今回の月面探査レースに参加することを聞いたとき、誰もが私の父、アレックスのことをクレイジーだと思ったでしょう。私もその一人でした。ですが、父は人生をかけてやりたいことを見つけたのだと思います。月を目指す理由は、どのチームも同じだと思うのですが、純粋に月に行きたいという強い思いがあるからでしょう。

− Plan Bチームは、何人のメンバーで活動していますか?

セルゲイ氏:Plan Bのプロジェクトには多くの人が携わっていますが、コアメンバーは私と父を含め、たった3名で構成されています。

Plan Bメンバーのセルゲイ氏

− Google Lunar XPRIZE参加チームの中で、Plan Bの優位性は何だと思いますか?

セルゲイ氏:現時点ではわかりませんが、すべてのチームが何らかの特別な力を持っていると思います。もし参加チームのいずれかが月にローバーを送り込むことに成功すれば、これまでの実績の数分の一のコストで月面探査を成功させたことになるので、それだけでも素晴らしいことですよね。

− チームの近況について教えてください。

セルゲイ氏:まだまだ先は長いですね。しかし、いままで不可能だと思われていたことが実現したり、Plan Bの活動でカナダの人たちをインスパイアすることができれば、私は本望です。

− ローバーのデザインコンセプトを教えてください。

セルゲイ氏:今はまださまざまな試作機を試している状況で、仕様が決定したわけではありません。私たちの作戦、アプローチに沿って、ローバーの開発は続いていくでしょう。そのためには資金集めも必要ですね。

月面探査レースの参加がゴールではない。Plan Bは技術開発のその先も見ていた

− Google Lunar XPRIZEへの参加に、どのようなヴィジョンを見据えていらっしゃいますか?

セルゲイ氏:私たちが開発している軌道計算や通信システムは、まだ完全ではありませんが、今後、人工衛星を低コストで製造するために必要な技術となるでしょう。私たちは、Google Lunar XPRIZEのその先も見据えて、イノベーションと月面探査を続けていきます。

− HAKUTOについて、率直な意見を聞かせてください。

セルゲイ氏:HAKUTOは才能あるメンバーが参加している上に、非常に統率がとれていて強力なチームだと思います。以前、全チームのメンバーが集まった『チームサミット』が東京で行われたときに、HAKUTOの皆さん全員に会えなかったのが心残りです。

− HAKUTOへのメッセージもお願いできますでしょうか。

セルゲイ氏:不可能を可能にし、通説を覆すためには多様な人々の存在が必要です。友人として、既存の概念に捉われず、境界線を押し広げていることを大変うれしく思っています。また、ライバルとしてPlan Bの動きにも注目していてください!

− 最後に日本の皆さんへメッセージをお願いします。

セルゲイ氏:HAKUTOは未来への道を切り拓き、扉を開く存在です。彼らは歴史を作っています。Google Lunar XPRIZEに参加する人たちを、より多くの人に知ってもらい、支えてほしいと思います。

− ありがとうございました!

親子で月を目指す、Plan B。

家族や友人など、パーソナルな力を結集して月を目指すというユニークなチーム、Plan B。大型の資金調達をするチームがある一方で、彼らのような小さなチームはレースにおいて不利に見える。しかし、「月への情熱」では一歩も引けをとらない。限られたリソースの中で、最適解を出すこと。それができればいいのだから。自宅オフィスを駆使した低コストでの開発に奮闘する彼らだが、等身大のスケールで月を目指す彼らに、私は大きな勇気をもらった。もちろん、Plan BはGoogle Lunar XPRIZEで優勝することだけでなく、その先も見据えての技術開発を続けている。彼らの持つイノベーションの種が、私たちの未来に何をもたらすか、今後も目が離せない。

PROFILE

Team HAKUTO 村井太一 / TAICHI MURAI

東京理科大学4年。大学で機械工学を専攻する傍ら、2015年春よりHAKUTOプロボノメンバーとして活動開始。2016年春よりispaceのインターンとしてもHAKUTOの活動をサポート中。

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