ムッタが訊く!【第1回】一年で7kgから4kgに。超軽量HAKUTOローバーフライトモデル

みなさんこんにちは。南波六太です。いよいよ始まりました新企画「ムッタが訊く!」。
いろんな宇宙の専門家に、私、南波六太が直撃。ややこしい宇宙の話を、わかりやすーく聞いていきます。
第一回のゲストは、世界初の民間月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に、唯一日本から参加しているチーム、HAKUTO。そのローバー(月面探査機)を開発している四人のエンジニアたちです。

前編:「軽量化」と「パフォーマンス」のせめぎ合い

2016.08.29

南波六太

宇宙飛行士

田中利樹

サーマルデザイン・エレクトロニクスエンジニア

古友大輔

メカニカルエンジニア

清水敏郎

ソフトウェアエンジニア

工藤裕

エレクトロニクスエンジニア

南波六太(以下、ムッタ):今日(8/29)は、実際に月を走るローバーフライトモデルのデザインがお披露目されたんですね。おめでとうございます!

一同:ありがとうございます。

ムッタ:今日はこのローバーについて聞いていきます。その前に自己紹介をお願いできますか?

一同:はい。

ムッタ:まず古友さんから。

古友:古友大輔です。HAKUTOに参加したのは2012年。前職は、国際宇宙ステーションの中で使うシステム機器をつくったり、その前は、自動車メーカーでスポーツカーの開発に携わってました。

古友大輔さん

ムッタ:…!僕も自動車メーカー出身です!HAKUTOに参加した経緯は?

古友:Facebookで見かけたんです。「民間で月面探査機を作って月に行く」チャレンジが面白いと思って、すぐメッセージ送りました。

ムッタ:次は田中さん、お願いします。

田中利樹(以下、田中):田中利樹です。僕は、大学で小型人工衛星の研究開発をしてました。ちょうど5年の任期が切れるタイミングで、HAKUTO代表の袴田さんに声をかけてもらって。2015年の4月からHAKUTOに参加しています。

田中利樹さん

ムッタ:宇宙に興味を持ったキッカケは何だったんですか?

田中:うーん。僕の好きなアニメがあって。その中に、主人公が自分の作った飛行機でヒロインを助けに行くシーンがあるんですけど。学生の時にそれを見て、自分で何かを作るのっていいなって。それがキッカケで、宇宙開発の道に進みました。

ムッタ:次は工藤さん、お願いします。

工藤裕(以下、工藤):工藤裕といいます。HAKUTOに参加したのは2016年の4月から。僕もFacebookの募集を見て、5分で応募しました。

ムッタ:5分!?

工藤:前の仕事は宇宙と全然関係なくて。最初は通信会社の研究所で働いて、その後はレーザーカッターの技術開発をしてました。

工藤裕さん

ムッタ:もともと宇宙が好きだったんですか?

工藤:宇宙というか星空が好きで、趣味でプラネタリウムを作ってます。

ムッタ:すごいですね!

工藤:ありがとうございます。完全に自慢ですね(笑)。

ムッタ:最後に清水さん、お願いします。

清水敏郎:(以下、清水):清水敏郎です。僕は、ソフトウェアの開発会社に就職して、エンジニアとして働いてました。実は今でも、籍はその会社に置いていて、HAKUTOは出向扱いなんです。

清水敏郎さん

ムッタ:どういう経緯でHAKUTOに?

清水:たまたま会社からの帰り道にホワイトレーベルスペースジャパン(※編集註:HAKUTOの前身企業)があったんです。ずっと気になっていて、思い切って顔を出してみたらハマってしまって…(笑)

ムッタ:(笑)

清水:はじめはプロボノ(※編集註:ボランティアメンバー)として。その後会社に交渉して、出向させてもらいました。

ムッタ:HAKUTOには本当に色んな人が集まってるんですね。では早速、今日の主役のローバーを見せてもらっていいですか!

一同:どうぞ!

HAKUTOローバーフライトモデル

ムッタ:おおっ!…小さい…あ、すみません。

工藤:いえいえ(笑)。小さいのが特徴なんです。

古友:コンセプトは「小型・超軽量」。限界まで軽いローバーを作りました。

ムッタ:なるほど。どのくらい軽いんですか?

工藤:4kgです。ライバルチームと比べてもダントツに軽いですね。

古友:HAKUTOが作った最初の試作品が10kg。最後の試作品が7kg。HAKUTOの歴史は、小型化と軽量化の歴史なんです。

ムッタ:一年で7kgから4kgに!?

古友:理由はロケットの打ち上げ費用です。

工藤:軽いほど、打ち上げ費用は安く済むので。

古友:ロケットで1kgのものを打ち上げるのに1.2億円かかるんです。合言葉は「1g12万円」。

田中:つまり1g削れるなら、10万円かかってもやりましょう、ということです。

ムッタ:軽量化へのエンジニアの執念を感じます。

古友:お金のことを考えるとローバーは軽いほうがいいので、2輪ローバーで行くことに決めた時期もあったんです。2輪の方が、圧倒的に小さいし、軽くなるので。

HAKUTO PFM1 二輪モデル

清水:当時は、今みたいにスポンサーもあまりついてなくて、お金の余裕がなかったんです。

古友:その中でビジネスを回してレースに勝つためには、コストに優れた2輪が有望でした。

田中:袴田は当初「1kgのローバーをつくる」って言ってましたね。

ムッタ:1kg!

清水:でも技術者は、性能の良いものを作りたくなってしまう人種なので…4輪と比べると走行性能では見劣りする2輪に納得できなかったんです。

ムッタ:エンジニアとマネジメントのせめぎ合いですね。いつ頃の話ですか?

田中:去年の夏くらいですかね。

ムッタ:けっこう最近ですね!

一同:はい(汗)。

ムッタ:最終的にどうやって4輪に決まったんですか?

清水:レースのミッションが「月面を500m以上走行する」ことなんですけど、色々実験したら、2輪だと500mを完走するのが難しいことがわかって。

古友:で、4輪でどこまで軽量化できるかを計算して、出てきたのが4kgという数字だったんです。

ムッタ:みなさん4輪を推していたんですか?

古友:僕は、言い方悪いですけど、どっちでもいいなと。2輪に挑戦してみたい気持ちもありました。いずれにしても、高いお金を掛ければ、月に行って走ることはできます。僕らは限られた時間とお金で月を目指す。そのための技術だと思ってます。「ない袖振るのが技術者の仕事」って、これは昔の上司の言葉ですけどね。

ムッタ:「ない袖振るのが技術者の仕事」…。しびれますね。

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