ムッタが訊く!【第1回】一年で7kgから4kgに。超軽量HAKUTOローバーフライトモデル

みなさんこんにちは。南波六太です。いよいよ始まりました新企画「ムッタが訊く!」。
いろんな宇宙の専門家に、私、南波六太が直撃。ややこしい宇宙の話を、わかりやすーく聞いていきます。
第一回のゲストは、世界初の民間月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に、唯一日本から参加しているチーム、HAKUTO。そのローバー(月面探査機)を開発している四人のエンジニアたちです。

後編:「軽量化」が拓く宇宙開発の未来

2016.08.29

南波六太

宇宙飛行士

田中利樹

サーマルデザイン・エレクトロニクスエンジニア

古友大輔

メカニカルエンジニア

清水敏郎

ソフトウェアエンジニア

工藤裕

エレクトロニクスエンジニア

「小型化」によって新たな課題発生?

ムッタ:先ほど古友さんから話を振られましたが、田中さんのご専門は熱に関することですか?

田中:熱設計です。月面は、昼は100℃まで上がる苛酷な環境です。何も対策をしないと、ローバーの中に熱がこもって、電子回路が熱暴走を起こしてしまいます。そこで熱をローバーの外に逃がす「排熱」が大事になるんですが、ローバーが小さくなるほど、表面積が減って、排熱が難しくなるんです。

ムッタ:なるほど。小型・軽量化が進む中で、田中さんの課題は増えていったんですね。

田中:HAKUTOに参加したのが2015年の4月なんですけど、その段階でまだ熱設計はできてなかったんです。で、「1ヵ月で熱設計して」と言われまして…いきなり忙しくなりました。

ムッタ:厳しいですね(笑)。

田中:大変でした(笑)。毎晩うなされてたんですが、ある日夢の中で、ローバーの下半分を思い切って捨てることを思いつきました。

ムッタ:下半分を捨てる?

田中:ローバーの下半分は熱くなっても構わないことにしたんです。電子回路など大事な部品をローバーの上半分に集中させて、上半分と下半分の間に熱を通しにくい部材を入れて、熱をコントロールしました。

ムッタ:夢の中で思いついたんですか?

田中:パッと起きて「これは行けるかも」と思って、そのまま仕事を始めました。

ムッタ:まさに夢の技術ですね(笑)。

田中:はい(笑)。他にも、細かくパーツを分けて熱が伝わらないようにしたり。表面を銀でコーティングして、太陽光を反射するようにしています。

ムッタ:だからローバーは銀色なんですね。

田中:CFRPは黒いんですが、黒だと熱を吸収するので、銀色にします。

古友:あとは、前回話したウルテムの車輪。

田中:あ、そうそう。断熱効果の高いウルテムを車輪に使うことで、月面の熱がローバーに伝わりにくくしています。

ムッタ:ウルテムは、軽量化だけじゃなく熱対策にも大活躍ですね。

田中:結果的に、ローバーの内部上半分は、電子基板が正常に作動する0〜40℃の範囲内に収めることができました。

この先のこと

田中:ローバーを軽くできると、たとえば8kgのローバー1台じゃなくて、4kgのローバー2台という選択肢が生まれます。連携して動かすことで、より広い範囲を探索できるようになるので、やっぱり軽いと良いことがあるんです。

古友:そもそも宇宙に出るためには、地球の重力に打ち勝って、飛び上がらないといけません。とりわけ民間の宇宙開発は、コストとの戦いです。その中で、シンプルに軽いというのは強力な武器になると思ってます。

清水:宇宙開発のハードルを下げるキッカケにしたいと思ってるんです。僕自身、特別に宇宙を専攻して勉強したり、宇宙の仕事をしたりしてきた訳じゃない。でも飛び込んでみたら、できた。宇宙っていうとついつい及び腰になっちゃうんだけど、チャレンジしてみると案外できるんだよ、ということをみんなに伝えたいと思っています。

工藤:HAKUTOにとって「Google Lunar XPRIZE」は、あくまで最初のステップ。民間で月に行くっていう夢みたいな話にチャレンジして、実際に結果を残すことで、「自分もやってみよう!」って、みんながチャレンジするようになればいいなと思ってます。

ムッタ:ハードルが低くなれば、後から来る人たちは超えやすい。HAKUTOのチャレンジは、これからの宇宙開発に新しい道を作っているんですね!

一同:ありがとうございます。

古友:この後、今年の年末から年明けの完成を目指して、実際にローバーを製造していきます。そのローバーが2017年にロケットに乗って、いよいよ月を走ります。

ムッタ:楽しみですね。

田中:僕らは、これからが大変だったりします(笑)。

一同:(笑)

ムッタ:今日は本当にありがとうございました!

一同:ありがとうございました!

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