岡田武史×的川泰宣

元日本代表監督・岡田武史×JAXA名誉教授・的川泰宣「人は、夢を追う仕事を応援したくなる」(後編)

2016.10.27

元サッカー日本代表監督で、現在は四国サッカーリーグに所属するFC今治のオーナーであり、日本サッカー協会の副会長でもある岡田武史と、JAXA名誉教授であり、小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトで中心的な役割を果たした的川泰宣。「サッカー」と「宇宙」、一見つながりがなさそうな世界だが、「誰も成し遂げたことのないことに挑戦する」というチームスピリットは、サッカー日本代表チームも、「はやぶさ」プロジェクトも、そしてHAKUTOも同様だと言えよう。チーム作りや理想のリーダー像、若い世代に期待することなど、二人に幅広く話を聞いた。

「日本では、技術を持った民間企業や町工場が衛星やロケットを作り、JAXAを支えていた」(的川)

―的川さんは、HAKUTOのような新しい宇宙ベンチャーの動きをどのように見ていらっしゃるのでしょうか?

的川:日本は宇宙ベンチャーの動きがまだ活発だとは言えないけれど、応援したいと思っています。JAXAもいままでは民間のプロジェクトをあまりサポートしていませんでしたが、少しずつ、「自分たちは民間に支えてもらっている」という意識でベンチャーをサポートしようとする人が増えていると思います。

岡田:いま、民間企業の宇宙開発のレベルってどうなんですか?

的川:かなり高いですね。特にアメリカの場合はNASAの人材が宇宙ベンチャーに行くケースも多く、どんどん民間のレベルが高くなっています。あと、JAXAは自身で工場を持っていないので、実際に衛星やロケットを作っているのは、技術を持った民間企業や町工場なんです。だから、日本の宇宙開発における官と民の区別って、本当はないはずなんですよね。

元サッカー日本代表監督・岡田武史氏(左)、JAXA名誉教授・的川泰宣氏(右)

岡田:HAKUTOの活動にJAXAは関わっているんですか?

―先日、HAKUTOの月面探査ローバーにJAXAの放射線線量計を搭載して、月面における宇宙放射線環境データの取得を共同実施することが決まったそうですね。

的川:宇宙放射線の問題は、これからものすごく大事になってくるから、JAXAとHAKUTOが共同でデータ測定するのは大変いいアイデアだと思います。両者が歩み寄るきっかけになればいいですよね。

「夢を追う」という仕事を、人は応援したくなる

―岡田さんは現在、四国サッカーリーグに所属するFC今治のオーナーを務められていますが、「民間チーム」という意味ではHAKUTOとも通じる苦労があるのではないでしょうか?

岡田:ぼくは、経営者向けセミナーによく登壇しているのに、実際に自分で経営をしたことがなくて、いざ始めてみたら、想像とはまったく違った苦労がありました(笑)。代表監督のときは何を言われても、ただ耐えればよかったんだけど、経営は真綿でジワジワと締めつけられる感じっていうか。59歳にして初めて全然違う立場に立ってみて、気づかされたことがたくさんありました。

岡田武史氏

―地方リーグのサッカーチーム運営は、人材面でも資金面でも苦労も絶えなさそうです。

岡田:そうですよね。創業メンバーには、一流企業を退職してまで入社してくれる人がいたり、Jリーグのチームからトップレベルのコーチが来てくれたり、とても感謝しています。そんななか、ぼくは会食や講演をしながら、スポンサー集めに奔走しているのですが、一番大事だと思っているのは「夢を語ること」。ダンス教室や診療所もある、複合型スマートスタジアムの建設を計画したり、リスクを冒してでも、必死になって前を向いて走っていたら、みんながついてきてくれたっていうのが現状なんですよね。

―FC今治は、単なるサッカーチームの枠組みを超えて、新たな地域社会の枠組み作りを目指していらっしゃるそうですね。

岡田:チームを立ち上げた当時は、地方創生なんて全然考えてなかったんですけど、今治は町自体が衰退の問題を抱えているんです。そんななかでチーム運営を続けていくには、地域社会に関わりながら、新しいビジネスモデルを作っていかないと成り立たないんです。いまは今治中の幼稚園、小学校、中学校にサッカー指導者を派遣して、今治がサッカー強豪都市になることを目指した「今治モデル」というプロジェクトにも取り組んでいます。

的川:人はいろんな動機で出資しようとするけれど、やっぱり夢への投資が一番魅力的に感じていると思いますよ。例えば、「火星の土地を売ります」なんてキャンペーンがあるでしょう? すると、全世界から膨大な応募が集まるわけです。あれって、実際に土地を買えるかどうかよりも、その夢を買ってる。チャレンジに賭けているんですよ。いまHAKUTOを応援している人も、そういうモチベーションが大部分だと思うんです。

岡田:やっぱり、夢を語ることが大事ですよね。HAKUTOの袴田さんも、もっともっと夢を語ればいいんじゃないかな。

的川:大企業が大口で出資してくれることもありますけど、大勢の人が少しずつ協力するだけでも、ものすごい金額になるんですよね。「はやぶさ」プロジェクトの予算も、国民1人あたりで計算したら、1年間に10円ずつくらいの負担なんですよ。税金っていうシステムはその代表ですけど、民間でも大勢の人から共感を得られることをやっていくのが大事なんだと思います。

「みんなでいい世界を開発していきましょう」ということを、宇宙プロジェクトは伝えていかなければいけない
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