Snow Peak

「地球代表のユニフォームをデザインするみたいで血が騒いだ」Snow PeakとHAKUTOの思いとは(後編)

2017.04.07

Google Lunar XPRIZEの最終フェーズへ進む5チームに選ばれてから1か月ほど経った2月21日、HAKUTOは公募によって決まった月面探査ローバーの名称「SORATO」の発表と同時に、チームの新ユニフォームを初披露した。デザイン・制作は、新潟を拠点に世界へ新しいアウトドアスタイルを提案するSnow Peakが担当した。

プロボノメンバーなど、さまざまな職能を持つ多様なメンバーによって構成されるHAKUTOにおいて、チームのユニフォームデザインがもたらす役割とはなんだろうか。HAKUTOエンジニア古友大輔氏、クリエーティブ・ディレクター米澤香子氏、そしてSnow Peakデザイナー山井梨沙氏に、ユニフォームに施された特殊なギミックから、HAKUTOが宇宙を目指す意義までを語り合ってもらった。

「HAKUTOは、これまでの宇宙の常識にとらわれず、新しいことにチャレンジする集団」(米澤)

─これだけポケットに収納ができて、作業現場でも活躍する仕様になっているのに、新ユニフォームの見た目はスマートな印象を受けます。着丈も長めに設定されていますね。

山井:記者会見などでもお召しになる機会も多いということだったので、スーツのような丈感にこだわりました。フォーマルな場所にもマッチしますし、腰を覆うことでの防寒性もあります。

米澤:HAKUTOにとってユニフォームは、作業着であると同時に記者発表会や撮影で着用する第一礼装でもある、とお伝えさせていただきました。とくに私はこのスタンドカラーが気に入っています。襟を開くとカラーをねかせることもできて、スーツジャケットのようになるんです! 一般的な作業着はスタンダードな襟の形をしているものが多いけど、これは近未来感というか、SF映画に出てくるような形状です。

山井:フォーマルということでテーラードのイメージにしたかったんです。でも作業中などは首が空いていると寒いじゃないですか。だから、襟を開くこともできる2WAYの仕様にしました。先日のローバー命名式&応援楽曲初披露LIVEでHAKUTOやサカナクションのみなさんが私たちのデザインしたユニフォームをお召しになっている姿を拝見して、涙が出そうに……。みなさん本当にかっこよく着こなしていただいていて、感無量でした。

襟を開くとスーツジャケットのようになる
新ユニフォームを来たHAKUTO代表袴田氏とサカナクション

米澤:ありがとうございます。HAKUTOはこれまでの宇宙の常識にとらわれず、新しいことにチャレンジする集団です。そこをSnow Peakさんの視点から見て、デザインに反映していただけるとうれしい、というお話はさせていただきましたね。

山井:最初のお打ち合わせのときに、これまでのユニフォームを一つひとつ手作りしてきたというお話を伺って、「本当にチーム一丸となって宇宙を目指しているだ」と、その情熱にものすごく感動してしまいました。夢を持つプロフェッショナルが集まったすばらしいチームを手伝えるというのが身にあまる光栄で。きちんとしたユニフォームを作って、その情熱に応えたいと思いました。

米澤:HAKUTOに集まるメンバーのなかには、フルタイムのスタッフもいるし、プロボノ(専門性を活用したボランティアメンバー)もいれば、学生さんもいます。でも「フルタイムがHAKUTOの正式メンバーで、ボランティアはお手伝い」という関係性にはしたくなかったんです。みんなで一つのチームとして、一丸となって取り組んでいるわけだから。

それは担っている役割にも言えることで、実際に宇宙機を作っているエンジニアだけじゃなくて、ウェブデザイナーも、イベントを企画する人も、経理の人もみんな「HAKUTO」の一員だという意識が、同じユニフォームを着用することで、間違いなく芽生えると思うんです。

「人類が未踏の世界へ足を踏み入れる、かけがえのない瞬間に立ち会わせていただいているんだと震えました」(山井)

─Google Lunar XPRIZEの参加チームはみなさんユニフォームをお持ちなんですか?

古友:シャツやTシャツを作っているチームもありますけど、HAKUTOがいちばんこだわっていると思いますよ。このユニフォームは本当に高性能で、もう一着欲しいくらいです。

米澤:先日、月面探査ローバーのロケット打ち上げ資金のクラウドファンディングを開始したんです。そのリターンとして、ユニフォームを5着限定で用意したのですが、たちまち4着が売れてしまいました。(2017年3月の取材時点ではSサイズ1着のみ在庫あり)。

山井:それはうれしいです。このユニフォームが完成したのが、Google Lunar XPRIZEの最終フェーズへ進む5チームが発表された直後でしたよね。その後、新ユニフォームの発表時に、米澤さんから「次のステージに進む実感が湧いてきました」という頼もしいメールを頂戴して。これは本当にかけがえのない瞬間に立ち会わせていただいているんだな、と震えました。HAKUTOはこれから、人類が未踏の世界へ足を踏み入れるんだな、と。

─これまで宇宙ビジネスは一握りの限られた人たちのもので、クローズドな世界でしたが、HAKUTOはさまざまな分野のプロフェッショナルをどんどん巻き込んで、大きなプロジェクトにしていっています。HAKUTOの根本にあるDIY精神やベンチャー思想に対して、山井さんはどんな印象をお持ちですか。

山井:先ほどの「エンジニアだけがHAKUTOじゃない」というお話もそうですが、所属している人を限定しないことでどんどん輪が広がっていく可能性がありますよね。HAKUTOを通して、いろんな人がいろんなかたちで宇宙開発に関わることができる。それって感動的なことだと思います。

Snow Peakでも常日頃から「一人では何もできない」と実感しています。このユニフォーム一つにしても、糸を作る人がいて、生地を染める人、パタンナー、パーツを裁断して縫う人がいて……と、たくさんの人の手を渡ってできたんです。Snow Peakだけでなく、全員が宇宙のプロジェクトに関わっている事実をシェアしたくて、先日のローバー命名式にはユニフォームのサプライヤーさん(商品などの供給・製造業者)にも来てもらいました。そういう「みんなで高みを目指す」という精神は、私たちに共通してあるものだと思います。

Google Lunar XPRIZEの先にあるHAKUTOの野望とは?
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