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ファイナリスト5チーム比較HAKUTOの優勝可能性は

2017.08.07

Google Lunar XPRIZEの月へ向けたロケット打ち上げ期限である2017年末まで半年を切った今、いよいよレースは最終フェーズへ。各チームがテストと調整を繰り返し、徐々にランダーやローバーの情報が明らかになっていく中で、HAKUTOメンバーが見た各チームの特徴は?そしてHAKUTOの優勝可能性は?

Google Lunar XPRIZEは、いよいよ今年がクライマックス。民間の力で月面を探査するというこのレースに、2010年末の参加登録時には32チームが参加表明しましたが、多くのチームが、資金調達や技術開発がうまくいかず、合併したり撤退したりして脱落していきました。ファイナリストとして残っているのは、HAKUTOを含む5チームのみ。いずれも、ミッション達成へ向け着実に前進してきたチームです。
そしてHAKUTOの月面探査ローバーSORATOは、残るライバルチームの1つ、TeamIndusのランダーに相乗りし、2017年12月28日に月へ向けて打ち上げられます。(※)

Google Lunar XPRIZEは何がすごいレースなのか

Google Lunar XPRIZEは民間のチームが競う国際的な宇宙開発レースです。民間というところが重要で「税金など、国のお金を使ってはならない(厳密には国からの補助金などが開発費全体の10%を超えてはならない)。」というルールになっています。

莫大な費用が掛かり、一般的に国家プロジェクトで行われてきた宇宙開発を民間で行えるようにするには、ビジネスとして成立する仕組みを作る必要があります。宇宙開発を”国が主役の長大プロジェクト”から、”民間企業が主役の産業”とすることにより、「誰もが宇宙に行ける(アクセスできる)未来を近づけること」、これこそがGoogle Lunar XPRIZEの目的なのです。

Google Lunar XPRIZEの意義

宇宙は人間には厳しい環境なので、ロボットを送って探査することが第一ステップとなるでしょう。安全な場所を見つけて基地(住環境)を作ると人間が行けるようになります。よってレースのミッションは、まずは地球から一番近い月を目指し、探査するための基盤技術を開発させるように定められています。

Google Lunar XPRIZEのルール

ファイナリスト5チームの紹介

レースと年末のSORATOの打ち上げをより楽しんでいただくために、また、HAKUTO以外のチームはどんなチームなの? HAKUTOは本当に優勝できるの?という疑問に答えるために、まずはファイナリスト5チームの状況を簡単な図表で紹介します。
ミッション達成のためには、使用するロケットの信頼性やローバーの完成度が重要になります。信頼性を以下のようにランク付けし、で表しました。

★★★  実用実績あり
★★   開発中。地球上での動作実績あり
    開発中。実績不明・公開情報なし

打ち上げロケット提供組織の解説

  • ※1 TeamIndusとHAKUTOの探査機が載る予定のロケット、PSLVを提供するのはISROというインド宇宙研究機関です。政府機関ですがペイロード(宇宙に運ぶ物の総称。人工衛星など。)をロケット先端のフェアリング内に格納して打ち上げるサービスも行っており、成功実績を重ねています。
    ISRO ウェブサイト
PSLV:高さ46m、直径2.8m
  • ※2 SpaceILの探査機が載る予定のロケットFalcon9を提供するのはSpaceXというアメリカのベンチャー企業。イーロン・マスクが設立した企業です。NASAなどからペイロードの打ち上げを請け負うなど、民間宇宙企業のトップを走っています。
    SpaceX ウェブサイト
Falcon9:高さ70m、直径3.66m
  • ※3 Moon Expressの探査機が載る予定のロケット、Electronを提供するのはRocket Labというベンチャー企業です。実績はまだなく、2017年5月に「It's a test」と名付けられたElectronの初のテストフライトが行われたばかり。打ち上げは成功したものの、予定の軌道には届かず大気圏内の弾道飛行となりました。あと半年、開発が間に合うか否か。
    Electron:高さ17m、直径1.2m
    Rocket Lab ウェブサイト
  • ※4 Synergy Moonの探査機が載る予定のNeptune8を提供するのはInterOrbital Systems。早くからTeam Synergy Moonの一員としてGoogle Lunar XPRIZEに参加している企業です。とにかく安く打ち上げすることを心がけ、打ち上げ設備もロケットも他の会社と比べて圧倒的に簡素化された設計になっています。これまでいくつかのロケットの打ち上げ実績はあるものの、Google Lunar XPRIZEで打ち上げ予定の機種についてはこれからテストという段階。年末までに打ち上げの目処が立つかがカギとなります。
    Neptune8:高さ18.3m、直径2.0m
    InterOrbital Systems ウェブサイト
  • 中間賞について
    Google Lunar XPRIZEミッションで発生する様々な環境を再現した実地試験と分析を行い、宇宙空間でも問題なく性能を発揮できると証明されたハードウェアとソフトウェアを表彰する中間賞を設定しています。中間賞は、月面での撮影能力を評価する「撮影」、月面ローバーの性能を評価する「走行」、そして月面に着陸するための飛行および飛行制御能力を評価する「着陸」の3つの部門があります。

それでは、HAKUTOのライバルとなる4チームを紹介します。

TeamIndus(インド)

2010年、当時ITエンジニアだったRahulらによって設立されました。今では120名以上のエンジニアを抱え、その中には工学科出身の若手や元ISRO(インド宇宙研究機関)職員が含まれます。彼らの技術力はとても高く、レース後は、これまで蓄積した技術を使って衛星事業に参入する予定です。また、今年からインド全国をバスで巡る教育事業も開始しています。

SORATOが相乗りするTeamIndusのランダーHHKは、各種試験を8月に実施予定。非常に複雑なシステムと最難関の課題である着陸テストも行い、12月にはリハーサルが行われる予定です。SORATOのライバルとなるローバーECAの開発はほぼスタンバイOKらしく、カメラや電気系統の配置、月面走行に適したホイール、重さ、温度管理システムなどの改良などを重ねています。

しかし、準備万端に見える彼らにも、まだ懸念材料が残っています。7月7日に、約8000万ドルの総コスト確保のために、1500~2000万ドルの資金調達を検討していると発表しました。つまりまだ開発資金の調達が終わっていないのです。彼らのランダー開発に影響があればSORATOの開発も遅れるばかりか、もっと悪いケースでは月へ行けないことになります。絶対に踏ん張って開発を進めて欲しいところです。

TeamIndusのランダー「ECA」(イカ)。ヒンディー語で"小さな願い"という言葉の頭文字から名付けられました。

TeamIndusへのインタビュー記事はこちら

SpaceIL(イスラエル)

イスラエル初の月面着陸に取り組んでいる非営利団体のチームです。月まで航行し月面着陸をする月着陸船(ランダー)を兼ねた、ホッパー型の探査機を開発しています。着陸後、残った燃料で再度浮上、500m以上移動して再着陸するという戦略です。打ち上げロケットはSpaceXのFalcon9です。

2015年10月、どのチームよりも早くGoogle Lunar XPRIZEから打ち上げ契約承認を受けました。当時「2015年末までにどのチームも打ち上げ契約承認を受けることができなかった場合、レース自体を中止する」というルールがありましたが、そのレース存続の危機を救ったチームの1つ(もう1チームはMoon Express)でもあります。

彼らのゴールは教育の分野に大きな影響を与えることと、イスラエルを担う次世代のために科学・工学・数学など様々な分野で “アポロ・エフェクト”を引き起こすことです。大富豪などの理解とサポートを受けて、資金は潤沢と見られています。開発だけではなく様々な教育プログラムも盛んに行っており、イスラエルの小学校では、ほぼSpaceILが紹介されるとのこと。彼らのゴールである”アポロ・エフェクト” (※5)は着実に達成されているようです。

ただし、Google Lunar XPRIZEについては、あるイベントでHAKUTOメンバーと対談中に、2017年内には打ち上げられないと言ったとか言わないとか。しかしまだレースから撤退したわけではないので、ある日突然、打ち上げ日を発表する可能性もあります。

SpaceILのランダー「SpaceIL」。月面に着陸した後はホッパー型探査機となる。
  • ※5 アポロ・エフェクト
    1969年人類初の月面着陸に代表されるアメリカのアポロ計画は、アメリカの子供達や若者に夢を与え、科学者や技術者の育成に貢献しました。

Moon Express(アメリカ)

フロリダ州ケープ・カナベラルに拠点があるアメリカのチームです。2010年8月にチームリーダーのBob Richards氏をはじめとしたメンバーでチームを立ち上げ、同じ年の10月にGoogle Lunar XPRIZEに参加、2015年12月にXPRIZEから2番目に打上げ契約承認を受けました。月面着陸機(ランダー)は、チームが開発した無人宇宙船「MX-1E」を使用し、同じくアメリカの企業であるRocket Lab USAのロケット「Electron」にのせて、2017年に打ち上げを予定しています。

月を、人類に貴重な資源と大きな利益をもたらしてくれる地球の「第8番目の大陸」ととらえ、地球上で行われている経済や社会の活動範囲を月に広げることを目標としています。また、HAKUTOを構成するispaceと同じく、月での水資源に注目し、ロケット燃料への活用や宇宙探査の補給基地としての役割を検討しており、2019年に水資源探査のため、MX-1Eで月の南極地域へ上陸を計画しています。

MX-1EはElectronで地球の衛星軌道まで移動し、そこからさらにMX-1Eのロケットエンジンで月に向かいます。「着陸地点から500m以上移動する」というミッションに対して、スラスターを使って自身が「跳ねる」ことでミッション達成に挑戦します。このような「ホッパー型ランダー」の強みは、他のチームが移動用に開発している探査機(ローバー)の開発コストをランダー開発に集中できることです。しかし、MX-1Eが搭載する燃料はElectronから月までの移動や着陸にも使用されますので、月面に着陸した後に残った燃料でミッション達成に十分な距離を移動できるかがポイントになります。

Moon Expressは2017年1月までに合計4500万ドル以上の資金を民間から調達し、開発やテスト、打上げ費用にあてられる予定です。2017年7月12日に行われたRichards氏の会見では、「年末の打ち上げとGoogle Lunar XPRIZE優勝に向けてスケジュール通り進んでいる」と話しました。ランダーのエンジン部分は近々試験を行う予定で、「打ち上げまでの短い期間の中で対応すべき課題は多くある」とも話しています。チームが抱えている課題を打ち上げまでにどこまで解決できるかも、優勝へのカギとなりそうです。

Moon Express
Moon Expressのホッパー型ランダー「MX-1E」

Synergy Moon(インターナショナル)

現在残っている中で最もインターナショナルなチームで、現在15カ国のメンバーで構成されています。エンジニアはもちろん、アートディレクター、カウンセラーやミュージシャンまでもがメンバーに加わっていることが魅力です。バラエティに富んだメンバーで宇宙を目指し、宇宙を拓き、宇宙を身近なものにすることを目指しています。

2008年にHuman Synergy ProjectとInterplanetary Ventures が組んだことでスタート。この後InterPlanetary VenturesとInterOrbital Systems と組み、長い間活動を行ってきました。そしてなんといっても2016年末、それまでは競争相手だったTeam Stellar、Omega Envoy、Team SpaceMeta、Independence-Xの4チームがSynergy Moonに合流したことで、より強力なチームになりました。

Synergy Moonの長期的な目標は、個人での宇宙旅行を現実にすること。Google Lunar XPRIZE以外にも、2018年には月からサンプルを地球に持ち帰るプロジェクトなどが計画されています。2016年末の4チームの合流はGoogle Lunar XPRIZEにおいて強力なチームになりましたが、全チームともGoogle Lunar XPRIZEでの優勝はこの目標達成のための通過点であり、実際はその先を見据えて活動しています。
レースにおいて、Synergy Moonがどれほどの脅威となるかですが、彼らの情報は公開されておらず未だ謎に包まれた状態です。ロケットはInterOrbital Systems製で、スペックも公開されていますが、ローバーに関しては測量用と探査用の2台が月に行くこと以外、ほとんど公表されていません。全チームの中でもダークホース的存在と言えるでしょう。

Synergy Moonのインタビュー記事はこちら

HAKUTOの優勝可能性は

どのチームも民間初の月面探査の達成へ向けて着実に前進してきた実績のあるチームなので、強力なライバルです。
しかし、HAKUTOはこれら5つのチームの中でも優勝にかなり近いところにいます。そう言いきれるポイントをまとめました。

ローバーがすごい

HAKUTOは月面を走行するローバーにかけては他のチームに先駆けて開発を始めており、その完成度は他チームを常にリードしてきました。東北大学宇宙ロボティクス研究室の研究成果を裏付けにHAKUTOが採用したグラウザー(羽根)を付けたホイールはいつの間にかどこのチームも同じ方式を使うようになったほどです。形は真似できても、他のどのチームより検討・実験を重ねてきたHAKUTOは、試行錯誤の量が違いますので、走行勝負には相当な自信を持っています。

SORATOはTeamIndusのランダーに相乗りするため、TeamIndusのローバーECAと同時にレース開始となりますが、どのチームよりも先に月面に着陸することができれば、ECAよりも早く安全に500mを走りきることができるでしょう。

ただし、映像、画像の送信はTeamIndusのランダーを介する必要があり、HAKUTO側でコントロールし切れない部分があるため難しいかも知れません。お互いに開発が現在進行形で進んでおり、急な仕様変更や開発遅れなどがどうしても避けられません。それでも開発をきちんと間に合わせることができるかどうかは勝負のカギとなるかもしれません。

HAKUTOのローバー「SORATO」

ロケットがGoogle Lunar XPRIZEが定める期限内に打ち上がる

月面探査ローバーSORATOは、TeamIndusのランダーに相乗りし、今年末の2017年12月28日に打ち上げられます。このように打ち上げ予定日を発表しているのはこの2チームのみです。ルールでは、2017年末までにロケットの打ち上げを実施する必要がありますが、期限内に打ち上げできるのは私たちのみである可能性もあります。月面に辿り着ければ、ローバーが優秀な分HAKUTOが有利になります。(※)

しかし、2017年末までの打ち上げ実施にこぎつけてくるチームがないとも限りませんし、TeamIndusが開発を進めて、SORATOより優秀なローバーを開発する可能性もあります。予断を許さない状況ではありますが、現在のところ、HAKUTOが優勝にかなり近いチームであることは間違いありません。

以上、Google Lunar XPRIZEファイナリスト5チームを紹介してきました。HAKUTOの優勝可能性についてもお分かりいただけたかと思います。これで人類初の民間宇宙開発レースを誰よりも楽しめること間違いなしです!

2017年12月28日打ち上げの日、そして月でのミッション挑戦をお楽しみに!(※)

  • ※ 2017年11月8日 編集追記:
    XPRIZE財団がレース期限を2018年3月31日に改訂したことに伴い、ミッションの成功率を可能な限り高めるため、TeamIndusと打ち上げ日の協議を進めています。

PROFILE

間野晶子 / AKIKO MANO

HAKUTOのプロボノメンバーでSNSやメールマガジン等のコンテンツの執筆、編集などを担当。

黒木麻理 / MARI KUROKI

HAKUTOのプロボノメンバーで、SNSの執筆、運用を担当。

福守杏子 / KYOKO FUKUMORI

HAKUTOのプロボノメンバーで、HAKUTOの活動全般に亘りチーム内のハブ的な役割を担う。

山内敦雄 / ATSUO YAMAUCHI

HAKUTOのプロボノメンバーで、コンテンツの執筆を担当。

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