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au × HAKUTO REPORT

「うさぎの耳試験」「クレーター模擬試験」など、ミッション成功への鍵となる通信試験を鳥取で実施

2017.10.13

HAKUTOの月面探査ローバー「SORATO」の開発が最終段階に入る中、8月28日〜31日の4日間、鳥取砂丘にて新型アンテナの通信試験を実施した。地球からの指示を月面のSORATOに伝えるためには、地上とランダー(月面着陸機)間の通信だけでなく、ランダーとSORATO間の通信も絶対に途絶えてはならない。その性能をフィールドで確認するため、鳥取砂丘を月面に見立て、行われた試験の様子をレポートする。

いよいよ最終段階に入った開発。開発中の新型アンテナのテストを実施

試験の舞台となった鳥取砂丘

月面探査ローバー「SORATO」の開発は最終段階に入っていますが、HAKUTOの開発はタイムリミットギリギリまで続きます。残された短い時間の中、開発チームは少しでも信頼性と能力を向上させるための努力を続けています。

そんな中、HAKUTOメンバーは、月面での活動において何よりも重要な「通信」の信頼性を試験するために鳥取砂丘へやってきました。

今回試験するのは、開発中の新型アンテナ。KDDI総合研究所のエンジニアと共に数々の検証を経て、折りたたみ式アンテナを採用。以前までのアンテナよりも高くなったので、SORATOのボディによる反射波の影響、また地形によって電波が弱まる影響を抑え、より遠く、より確実な通信ができるように改良されています。

アンテナを高くするために、折りたたみ式で1本のアンテナを採用

鳥取砂丘を月面地形に見立てて試験を実施

通信電波は周囲の物に反射する性質を持っているため、見通しがよく、人工の障害物が少なく、なだらかな起伏があり、月面と同様に地面が細かい砂で覆われている場所が適しています。鳥取砂丘は南北に2.4km、東西に16kmと、今回の試験に最も適した場所です。

HAKUTOは鳥取県庁と協定を締結しており、2016年以降のフィールド試験は主に鳥取砂丘で行っています。

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今回紹介する試験は次の3つです。
直線距離特性 … 直線で距離が離れた場合の試験
クレーター模擬試験 … クレーター内に入った場合の試験
うさぎの耳試験 … アンテナ角度による通信特性の試験

事前予測よりも優れていた、直線距離特性

ランダー役の脚立から距離を開きながら、静止状態と走行状態で通信品質を計測

月面探査ローバー「SORATO」が月面で活動する際には、地球と直接通信するのではなく、ランダー(月面着陸機)を介して行うため、ランダーとSORATO間の通信を維持し続けなければなりません。電波は距離が離れるほど弱くなるため、ランダーから離れた場合の通信品質を計測しました。

試験の様子。手前にランダー役の脚立があり、数100m先にSORATOを置きます。ランダー側の通信アンテナは赤い風船の右側、ランダーの天板を模した水平の板の上に設置されています。画像手前から奥に向かう一筋のラインは、SORATOをソリに乗せて引きずった軌跡です

試験では、距離250mまで通信(データのやり取り)が可能でしたが、月面では電波増幅機器を搭載するため、本番では500m以上でも通信できる見込みです。(なお、レースのミッションでは500m以上移動しなければなりませんが、そのルートは必ずしもランダーから直線的に離れる必要はなく、カーブしたり、円周状に移動しても構いません)

シミュレーション予測との差異を確認するため、結果は現在解析中ですが、「地面の反射によるロスを多めに見積もっていましたが、そこまで大きなロスは無さそうですね」とHAKUTO無線ハードウェア担当の田中さん。

クレーター模擬試験で見えた、新型アンテナの効果

地面に深い穴を掘り、その中で高さを調整しながら電波強度を計測

人工的につくったクレーターの中で、通信をどの程度維持できるかを調べる試験です。月面走行中、ルート上にクレーターがあった場合に、どこまで深いクレーターの中を通ることが可能かを判断するため、深さごとの伝搬損失(※)のデータを計測します。

※ 伝搬損失:送信側(ランダー)の無線機から出力された電波が、受信側(SORATO)の無線機で受信されるまでに減る電波のエネルギーの減衰量

人工的にクレーターと同じ環境を作るために重機で地面に穴を掘り、SORATOを穴の底に置いた状態から少しずつ台を高くして電波強度を計測しました。(穴の掘削は鳥取県庁の許可を得て行っています)

電波は周囲の地形や物質による反射波の干渉を受けます。クレーターの中などにいると電波が届きにくくなりますが、新型アンテナは高い位置で受信可能なため、以前より深いところでも受信できるようになりました。「これは新型アンテナの効果ですね。実際の月面でも威力を発揮するでしょう」と田中さんも自信をみせます。

アンテナをピンと立てる、うさぎの耳試験

アンテナ角度による電波強度を計測

月面に降り立つまでSORATOのアンテナはたたまれていますが、展開時に不具合が出て不完全な状態で通信せざるを得なかった場合の電波強度を調べる試験です。ちょっとかわいいこの試験名は、うさぎは遠くの音を聞くとき、耳をピンと立てることに由来しているのだそうです。

通信アンテナが45度の場合の試験の様子

アンテナ角度が90度(正常)、45度、0度の場合で試験を行い、アンテナの角度が浅いほど(0度に近いほど)、通信可能距離は短くなりました。ただし0度でも100mは通信できるという結果でした。

チーム発足7年の集大成まであと少し!

試験結果は詳しく解析して本番に活かされますが、試験全体の指揮を取っていたHAKUTOの田中さんに今回の感想を伺いました。「鳥取県庁の方々の支援が温かく、試験もスムーズに実施できました。今後の課題は、得られたデータをどれくらい活用できるかです。設計を大きく変えることは難しいので、操縦時の運用にフィードバックしていきます」

宇宙開発では環境条件を推測したりするなどの事前準備が大切ですが、逆に言えばそこまでしかできないという難しさと隣合わせです。しかしその難しさは、未知なるチャレンジへのワクワク感ともなります。「月面での本番運用が楽しみです。試験では十分できている感じがあるので、月面でどうなるか、見てみたい」と語る田中さん。

チーム発足から7年が経ち、ついにプロジェクトのクライマックスが訪れようとしています。この後も振動試験や熱真空試験が予定されていますが、それらをパスし、万全を期してインドへ、そして月へ。月面でSORATOが活躍する日が楽しみです。

PROFILE

間野晶子 / AKIKO MANO

海外や日本でリサーチャーとして活躍後、数値解析エンジニアとして活躍中。グローバルな経験を活かしライターとしてサイエンスコラムやWEBニュースなどで記事を執筆。HAKUTOのプロボノメンバーでSNSやメールマガジン等のコンテンツの執筆、編集などを手掛ける。

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