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au × HAKUTO REPORT

SORATO、ついに打ち上げ場所のインドに向けて出発!

2017.12.28

HAKUTOの月面探査ローバー「SORATO」がついに完成。来年の打ち上げに向け、ロケットの射場があるインドへ向けて出発した。「1億人のムーンチャレンジ」で集められたメッセージや写真は、どのようにSORATOに格納されたのか。出発当日の成田空港で開催された壮行会の模様はどうだったか。出国までのSORATOの動きを報告しよう。

SORATOに託されたみんなの想い

au×HAKUTO MOON CHALLENGEでは、8月21日から10月5日まで、「1億人のムーンチャレンジ」と題したキャンペーンを実施した。SORATOと一緒に月面に送るメッセージと写真を募集した本キャンペーンでは、HAKUTOの成功を祈るもの、産まれたばかりの子供の無事な成長を祈る写真を添えたもの、未来の人類へのお願いなど、様々なメッセージが寄せられた。これらのデータは直径12cmのデータディスクに格納され、SORATOと供に月面へ向かう計画だ。

なお、データディスクの中にはそのほか、HAKUTO側のデータとして、月にちなんだウサギと餅米のゲノム、サカナクションの楽曲、ファン投票で選ばれた漫画『宇宙兄弟』のエピソードなども格納されている。

11月下旬、SORATOの内部にデータディスクを組み込む作業が行われた。「作業」と言っても手順は非常に簡単。データディスクのラベル側に面ファスナー(商標として知られるのは「マジックテープ(R)」や「ベルクロ(R)」)のテープを貼り、SORATOの底に固定するだけだ。

SORATO内部に格納されたデータディスク。データ面が上になっている

意外に思われるかもしれないが、面ファスナーはしっかり固定でき、かつ脱着も容易ということで、宇宙機では広く使われている。人工衛星を覆う金色の多層断熱材などは、面ファスナーを使って固定されることが多い。

データディスクのテープ込みの重量は約18g。普通の感覚では「たった18g」であるが、全重量をわずか4kgに抑えるために、1g単位での軽量化を図ってきたSORATOにとっては、かなり重い18gである。そんな苦労をしてまで搭載した18gには、みんなの想いが詰まっている。誰も居ない月面を孤独に走るSORATOには、きっと心強い応援になるだろう。

組み込み作業は、HAKUTOのJohn Walker氏と田中利樹氏が行った

このデータディスクは、記録時に金属系素材を物理的に彫り込んでいくので、特に長期保存に適した記録媒体である。将来、月面でこのディスクを手に取る人が現れることはあるのだろうか?

打ち上げ地のインドへ向け出発

いよいよ日本を出国する12月19日、成田空港にてSORATOの壮行会が開催された。会場は空港内の格納庫。時折、外から飛行機が離着陸する轟音が聞こえ、これから旅立つという臨場感がある中でのイベントとなった。

空港内の格納庫で行われたイベントの様子

まずは、パートナー企業を代表し、KDDI株式会社コミュニケーション本部の山田隆章本部長が挨拶。「我々が協力した通信・映像伝送だけでも解決すべき課題は多かった。プロジェクト全体では計り知れないほど多くの困難に直面し、それらを1つ1つ乗り越えて今がある。その苦難をともに乗り越えてきたパートナー各社も感慨ひとしおだろう」と述べ、「プロジェクトの成功を信じ、最後まで全力で応援して盛り上げていきたい」とエールを送った。

KDDI株式会社の山田隆章コミュニケーション本部長

続いて、各パートナー企業の出席者からも挨拶があった後で、HAKUTOの袴田武史代表が登壇、SORATOの変更点などについて説明した。この変更について、詳しくは別記事を参照して欲しいが、袴田代表は「フライトモデルにおけるこのような仕様変更は無謀と思われるかもしれないが、可能な限り改良はしていく」とコメント。「この最終形態のSORATOで、Google Lunar XPRIZEの優勝を目指したい」と意気込んだ。

[関連記事]・ローバーの最終形態と月面でのミッション詳細を大公開

HAKUTOの袴田武史代表

SORATOはこの後、JAL717便でバンコクを経由し、インドへ向かう。荷受け式では、袴田代表と山田本部長から、SORATOとキャリングケースがJAL側に引き渡され、キャリングケースには特製のプライオリティタグが付けられた。

イベントには、ゲストとして女優の川栄李奈さんも登場、SORATOの出発に華を添えた。川栄さんは、auのCMに織姫(織ちゃん)として出演中。CMでは月の住人という設定になっており、SORATOはつまり、これから彼女の"故郷"に向かうことになるわけだ。

川栄さんは、CMの織姫の衣装で登場

しかし月面への道程は長くて険しい。そんな旅に出るSORATOのために、川栄さんは特製のお守りを用意、袴田代表に手渡した。川栄さんは、このお守りに好きな言葉として「楽しむ」と記載。袴田代表は、「このプロジェクトは困難なことが多いが、我々のベースには楽しむということがある。このメッセージを大切にしながら、どんどん楽しんでいきたい」と応えた。

SORATOはどうやって月に行く?

今後のSORATOの予定は以下の通りだ。日本から月面までの道程は遠い。何度も乗り換え、進路を変えつつ、月面へと向かう。

(1) 12月19日、成田空港からインドへ飛行機で輸送
(2) サティシュ・ダワン宇宙センターへ輸送
(3) PSLVロケットで打ち上げ
(4) 月面の「雨の海」に着陸
(5) ランダーから分離。月面でのミッションを開始

打ち上げロケットは、インド国産のPSLVが使用される。PSLVは安価で信頼性が高いロケットとして知られており、同国初の月探査機「Chandrayaan-1」の打ち上げに成功した実績もある。

PSLVロケットで打ち上げられたランダーは、すぐに月には向かわない。まずは遠地点高度が7万km程度の楕円軌道に投入され、地球を周回(静止衛星の高度が3万6千kmだから、これはその2倍ほど遠い距離になる)。数日間は地球をグルグル周り、ちょうど良いタイミングでエンジンを噴射、月に向かう軌道に乗せる。

月を周回する軌道に入った後も、すぐに着陸は行わない。ここでも月をグルグル周り、着陸地点が朝を迎えるタイミングを待ち、そこで月面への降下を開始する。見ている方の気持ち的には、なるべく早く着いて欲しいかもしれないが、このスケジュールなら、何かトラブルがあったときも、周回中に対応する時間的な余裕がある。

ランダーが無事に月面に着陸し、分離も正常に行われたら、いよいよSORATOの出番だ。Google Lunar XPRIZEでゴールするためには、まず月面のスタートラインに立たなければならないが、そこに辿り着けるかどうかは相乗り先のTeamIndus次第でもある。SORATOは12月20日にバンガロールにあるTeamIndusの拠地に無事到着した。月面で一緒にレースができるよう、成功を期待したいところだ。

PROFILE

大塚実 / MINORU OTSUKA

PC・ロボット・宇宙開発などを得意分野とするテクニカルライター。電力会社系システムエンジニアの後、編集者を経てフリーに。最近の主な仕事は「完全図解人工衛星のしくみ事典」「日の丸ロケット進化論」(以上マイナビ)、「人工衛星の"なぜ"を科学する」(アーク出版)、「小惑星探査機「はやぶさ」の超技術」(講談社ブルーバックス)など。宇宙作家クラブに所属。

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